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『デカメロン』 のボッカチョ

今日12月21日は、中世イタリアの作家で「散文の父」といわれるボッカチョが、1375年に亡くなった日です。

1313年に、イタリア西部にある都市国家フィレンツェ商人とフランス人の母の間に生まれたジョバンニ・ボッカチョは、フィレンツェで幼少年期をすごし、家庭教師の指導でダンテの作品を学んだことで文学に魅かれます。しかし、商人にさせたかった父親は、ボッカチョを南部の都市ナポリに送って、金融業者の見習いをさせました。商人になる気のないボッカチョは、文学書を読みふけったため、怒った父親は法律家にしようと、ナポリ大学に入れました。ここでもボッカチョはギリシア・ラテン文学に熱中して、文学に生きることを決意します。やがて、当時ナポリを支配していた文人のロベルト王の明るく陽気な宮廷の集まりに加わるようになり、王の娘マリアを愛し、宮廷に出入りするたくさんの文学者と出会って、『ディアナの狩』などいくつかの初期作品を残しました。

1340年ころ、フィレンツェにもどったボッカチョは、マリアを題材にした『フィアメッタ悲歌』などいくつかの作品を書きますが、何といっても代表作は、1349年から1353年ころに書かれた『デカメロン』です。1348年に大流行したペストから逃れるために、ある片田舎にひきこもった男3人、女7人の計10人が退屈しのぎの話をするというもので、十日間に10人が1話ずつ語る形式で全100話、ぼう大な短編小説集です。「デカメロン」は、ギリシア語の「10日」を意味するため『十日物語』ともいわれます。

ペストによって引き起こされた社会的倫理的な混乱が重厚な筆で記された「序文」にはじまり、1日目は陽気で機智にあふれた話の数々、2、3日目に展開する恋の冒険や欺瞞の物語、4日目の不幸な愛の物語では陰うつな調子がもどり、5日目で恋の物語が幸せな結末に導かれるといった展開で、ユーモアと艶笑に満ちた恋愛話や失敗談などで構成されます。それぞれ『千一夜物語』や『七賢者の書』から影響を受けているといわれ、のちにチョーサーの『カンタベリー物語』などに大きな影響を与えました。

1350年ころから、ダンテ と並び称される ペトラルカ と親交を結び、お互いに影響しあいながら、イタリア・ルネサンスのさきがけといわれる数々の名作を残しました。1373年には、50歳ほど年上であるダンテについて講義するなど、ダンテの理解者、賛美者でもありました。単に喜劇 (コメディア) と題されていたダンテの叙事詩に神聖なるという冠をつけ、『神曲』の名を定着させたのはボッカチョだといわれています。


「12月21日にあった主なできごと」

1339年 南北朝時代はじまる…後醍醐天皇が吉野に移り「南朝」を開いたため、室町幕府を開いていた足利尊氏は新しい天皇を立てて「北朝」として、朝廷の分裂時代がはじまりました。南北朝時代は、室町幕府3代将軍足利義満が1391年、北朝に統一するまで続きます。

1909年 松本清張誕生…『点と線』『ゼロの焦点』など、「社会派推理小説」と呼ばれる傑作を次々にヒットさせた松本清張が生まれました。

投稿日:2011年12月21日(水) 07:48

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)