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「モダンデザインの父」 モリス

今日3月24日は、19世紀後半のイギリスで、美術工芸家であり詩人であり、またあるときは社会運動家としてめざましい働きをしたモリスが、1834年に生まれた日です。

ヨーロッパでは、18世紀の末ごろからイギリスを中心に産業革命がすすみ、19世紀になると機械によって大量生産された商品があふれるようになりました。ところが、かつての職人たちは誇りを失い、手仕事の美しさも失われていきました。モリスは質の良くない品物が市場に出まわるのは、機械というのがよくないと考え、機械が発明される前のように、すべて人間の手や技で作れと主張しました。そんな生活と芸術を一致させようとするモリスのデザイン思想と実践は、各国に大きな影響を与え、20世紀のモダンデザインの源流になったと、高く評価されています。

ウィリアム・モリスは、ロンドンの証券仲買人の子としてロンドン郊外に生まれましたが、3歳の時に父が亡くなり、教師をめざしてオクスフォード大学に入学しました。まもなく、父の巨額の遺産を相続、後に著名な詩人となるバーン・ジョーンズと知り合い、共にフランス旅行をするうち、中世のゴシック建築に魅かれ、芸術家をめざすようになりました。

1861年、ラファエル前派の芸術家たちとモリス商会を設立し、ステンドグラスや家具などを制作し、質素な材料ではあっても、豊かな装飾をほどこした作品を次々に生み出していきました。1865年には叙事詩『地上の楽園』を完成させ、詩人としての名声も得ました。また、当時のイギリスの商業印刷に対抗し、ケルムスコット・プレスを設立して、理想の書物の制作に乗り出してもいます。

1877年ごろからモリスは、当時おこったブルガリアの大虐殺事件に関心をいだいたのがきっかけになって、社会主義運動に傾いていきました。芸術が市民のものとなるためには、市民の生活向上が欠かせないと考えたからなのでしょう。古建築の破壊に反対し、森林伐採や河川の汚染に抗議するなど、今日の文明批判の源として光を放っています。

晩年は、ユートピア小説を書いたり都市問題などについて研究したり、講演の日々を精力的に行ないましたが、1896年、ノルウェー旅行のさなかに弱かったか身体が急速に衰え、63年の幅広い活動を終えたのでした。
 
モリスは日本人にも思想・精神面で影響を与えています。夏目漱石がイギリス留学中にモリスの『地上の楽園』を愛読し、その思想に共鳴したこと、芥川竜之介がモリスを卒業論文のテーマに選んだこと、白樺派の人たちがモリスから、思想・精神面で強い影響を与えられたことなどが知られています。


「3月24日にあった主なできごと」

1185年 平氏の滅亡…一の谷、屋島の戦いに敗れた平氏は、源義経の率いる水軍を、壇ノ浦(山口県・下関市)で迎えうちました。この日の正午近くに戦闘が始まり、平氏は西から東へ流れる潮流にのって有利に戦いを進めていました。ところが、3時過ぎになって潮流が逆になると形勢は逆転。敗戦を覚悟した平氏は、次々に海に身を投げていきました。この「壇ノ浦の戦い」で平氏は滅亡、以後源頼朝の支配が確立しました。

1603年 エリザベス女王死去…「グッド・クィーン・ベス」(すばらしい女王、エリザベス)という愛称で国民からしたわれるエリザベス1世が亡くなりました。

1870年 本多光太郎誕生…明治から昭和にかけて、日本の科学の基礎をきずき、長岡半太郎と並んでその力を世界に示した物理学者本多光太郎が生まれました。

1905年 ベルヌ死去…「80日間世界一周」 「海底2万マイル」「十五少年漂流記」などを著し、ウェルズとともにSFの開祖として知られるフランスの作家ベルヌが亡くなりました。

 

投稿日:2011年03月24日(木) 06:25

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)