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セミクラシックの解説

みんなのおんがくかい」には、48曲のセミクラシックの名曲を収録しており、このすべてに、これまで例のないような、母親がわが子に話して聞かせられるやさしい解説を付けた。子どものピアノ発表会でもっとも人気のある曲としても有名な、ベートーベン作曲の「エリーゼのために」は、次のように紹介している。

エリーゼというのは、女の人の名まえです。どのような女性だったのか、それは、わかりません。でも、楽譜に「エリーゼの思い出のために、ベートーベン作曲」と記されていたというのですから、ベートーベンの恋人だったのでしょう。ピアノの前で、かわいいエリーゼを思いだしているうちに、指が自然に流れるように動いて、この美しい曲が生まれたのではないでしょうか。
曲の形は、主題の部分が、まるで、まわっているようにくり返される、ロンド形式といわれるものです。なるほどこの「エリーゼのために」は、甘くもの悲しいせんりつが、なんどもくり返されています。それは、エリーゼがベートーベンの恋人だったとしたら、断ちきれない愛の深さが、曲のくり返しになってしまったのかもしれません。自分の心にだけ、そっとしまっておきたい、清らかな愛……。
ベートーベンは、「英雄」「運命」「田園」などの交響曲のほかに、「月光」「ワルトシュタイン」など多くのピアノ曲の傑作をも残しています。そのピアノ曲のうち、この「エリーゼのために」は40歳のころの作品だといわれています。ベートーベンは、28歳のころからしだいに両耳が不自由になり、31歳のときには、自殺さえ考えています。40歳近くでは、鳥のさえずりも、人の話も、楽器の音も、ほとんど聞きとれないほどになってしまいました。
ベートーベンは、ピアノから流れる音を、心の耳でとらえながら、この「エリーゼのために」を作曲したのでしょう。だからこそ、曲の美しさが、こんなにも心にしみ入ってくるのかもしれません。目をとじると、ベートーベンのやさしさが、あたたかく伝わってきます。

投稿日:2005年11月15日(火) 09:33

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)