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「動物行動学」 のローレンツ

今日2月27日は、「刷り込み」の研究者で、動物行動学(エソロジー)を確立したオーストリアの動物学者ローレンツが、1989年に亡くなった日です。

1903年、オーストリア・ハンガリー帝国時代に高名な外科医の子としてウィーン近郊に生まれたローレンツ・コンラートは、1922年に渡米してコロンビア大学で医学を学びはじめ、1923年に帰国後ウィーン大学で比較解剖学、動物学、医学、カント哲学を学び、1928年に医学博士となりました。

その後、解剖学研究所で助教授をつとめながら『社会性カラスの行動学について』などの論文により1933年、動物学分野での博士号を取得し、『鳥の環境生活における仲間』などの論文で「動物行動学」の基盤をこしらえました。1936年に友人であり同僚となるティンバーゲンと、野生・家畜・雑種のガチョウを研究し、1940年にケーニヒスベルク大学の心理学教授となりましたが、1941年にドイツ国防軍に徴兵され、軍医として配属されものの、ソ連軍の捕虜となり、1942〜48年まで捕虜収容所で拘束されます。解放された時に書きためていた本の原稿とペットとしていたムクドリを持ち帰ることを許され、1950年には行動心理学ローレンツ研究所が設立され、1957年にはミュンヘン大学動物学科の名誉教授、1958年にはマックス・プランク行動心理学研究所に移りますが、その間20数年にわたる鳥類、魚類を中心とした「動物行動学」の研究分野で、とても重要な発見をしました。

それを生理学や解剖学などからはわからなかった動物の遺伝的な行動形式をひきだす「リリーサー」などの概念として提言。卵からかえったヒナが、初めて動くものを親と認識して後を追うという「刷り込み」もそのひとつです。これらの発見を、『ソロモンの指輪』や『攻撃』(人間の攻撃性は、動物の攻撃性と同根であることを指摘)など一般向けの出版物に著すと、たくさんの議論を巻き起こしました。

こうした長年の「動物行動学」の研究が評価されて、同僚研究者のティンバーゲンやミツバチの研究をしたフリッシュとともに1973年、ノーベル医学・生理学賞を受賞したことは、よく知られています。

ローレンツは、マックス・ブランク研究所を退職した後も研究と執筆活動を続け、1974年にはオーストリアにもどり、オーストリア科学アカデミー動物社会科学研究所の所長となって、人間論、文明論を含めた体系的な著作を発表し、『文明化した人間の八つの大罪』などを残しています。


「2月27日にあった主なできごと」

1876年 江華条約の締結…鎖国をつづける朝鮮に国交を求めていた明治政府は、前年に日本の軍艦が朝鮮の江華島付近で砲撃を受けたのに対し、猛反撃を加えました(江華島事件)。この日更なる圧力をかけて江華条約を締結させ、念願の朝鮮開国を実現させました。この条約は釜山・江華港を貿易港として開港、朝鮮海航行の自由、江華島事件の謝罪など、日本優位の不平等条約で、日本の朝鮮侵略の第1歩となりました。

1933年 ドイツ国会議事堂炎上…この日の夜突然、首都ベルリンの国会議事堂が燃え上がり、ヒトラー はこれを共産党員のしわざだとして、共産党員をすべて逮捕し、間近にせまった選挙に出られなくさせました。このため、ナチス党は選挙を有利に進め、独裁の足がかりとしました。

1936年 パブロフ死去…消化腺と条件反射の研究で、ノーベル賞を受賞したロシアの科学者パブロフが亡くなりました。
投稿日:2014年02月27日(木) 05:05

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)