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『天路歴程』 のバニヤン

今日11月28日は、プロテスタント世界で最も多く読まれた宗教書『天路歴程』を著わしたことで知られるイギリスの説教師・文学者バニヤンが、1628年に生れた日です。

イングランド・ベドフォード州の片田舎に、貧しい鋳かけ職人の子として生まれたジョン・バニヤンは、学校教育はほとんど受けず、父の職業を手伝いながら、徒弟修業をしました。1644年に「清教徒革命」(1642-49年。国王と議会が対立し、王朝を倒した市民革命)に、議会軍に参加して国王軍と戦ったのち、信仰心のあつい娘と結婚しました。妻が持っていた宗教書を読んで感銘したバニヤンは、ある清教徒系の教会に加わると、やがて熱狂的な説教師となって、街頭に立ってクエーカー教徒と論争したり、本を著わすなど頭角をあらわすようになりました。

しかし1660年王政復古されると、イギリス国教に反対の立場にあったことで、法に反して説教をしたかどで捕えられ、1961年から短期間の釈放を含めると、チャールズ2世が信教自由令を出すまで、監禁は12年にわたりました。この投獄中にバニアンは、『あふれる恩寵』を著わしています。釈放後も、ふたたび積極的に説教活動や伝道を続けましたが、チャールズ2世が信教自由令を撤回したため、1675年、またも逮捕され、ウース川にかかる石橋の上にあった監獄に投獄されてしまいました。このときは、6か月で釈放されましたが、その監禁中に書かれたのが、代表作となる『天路歴程』の第1部でした。

それからのバニヤンは、高い評判のために再び逮捕されることはありませんでしたが、1688年に亡くなるまでに『天路歴程』以外に、罪に堕ちていく人物の一生を対話形式で寓話風に描いた『悪太郎氏の生涯と死』などを遺しています。

なお、『天路歴程』は、2部構成で書かかれ、第1部は1678年に、第2部は1684年にロンドンで出版されています。この書は、「破滅の町」に住んでいた男が、「虚栄の市」や破壊者アポルオンとの死闘など、さまざまな困難な通りぬけ、「天の都」にたどり着くまでの旅の記録の体裁をとっています。聖書を除けば、プロテスタント世界で最も多く読まれた宗教書とされ、特にアメリカへ移住した清教徒へ与えた影響は大きなものがあるとともに、いまも世界中で愛読されつづけています。


「11月28日にあった主なできごと」

1262年 親鸞死去…『南無阿弥陀仏』と念仏をとなえれば来世で極楽浄土に生まれかわることができると説く「浄土宗」を開いた法然に学び、その教えを発展させて「浄土真宗」を開いた親鸞が亡くなりました。

1883年 鹿鳴館開館…日本初の洋式社交場が、東京・内幸町に開業。外国人を歓迎する舞踏会がさかんに行われ、欧化主義風潮の拠点となったため、1887年ころまでの狂熱的な一時期を「鹿鳴館時代」とよんでいます。

投稿日:2012年11月28日(水) 05:56

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)