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人道主義の長与善郎

今日8月6日は、小説『青銅の基督』、戯曲『項羽と劉邦』、自伝『一夢想家の告白』などを著わした長与善郎(ながよ よしろう)が、1888年に生れた日です。

東京の麻布に代々医者を営む名門の家に生れた長与は、学習院高等科に学び、柳宗悦、木戸幸一らと交遊しました。1911年に東京帝国大英文科に入学すると、武者小路実篤の著書に感動し、志賀直哉や武者小路らの雑誌『白樺』同人となりました。そして、トルストイやニーチエ、徳冨蘆花、内村鑑三らの著作に親しみ、特に漱石の『それから』によって、文芸に開眼されたと記しています。

1912年に東大を中退し、文学の道を志す決意をした長与は、1914年『白樺』に自らの失恋と恋愛を描いた『盲目の川』や、中国史に取材した長編戯曲『項羽と劉邦』を発表。この劇は宝塚歌劇団初の一本立てミュージカル『虞美人』の原作として人気をよび、新進作家として注目をあびることになりました。以後、踏絵用にみごとなキリスト像をつくりすぎたために、信者と疑われて処刑された青年芸術家の苦悩を描いた短編『青銅の基督(キリスト)』など多くの小説や戯曲、人道主義を擁護する評論を発表し、白樺派の中心人物として活躍しました。

1923年におきた関東大震災で『白樺』が廃刊になった後は、武者小路、志賀、倉田百三、千家元麿、岸田劉生らに呼びかけて『不二』を主宰し、自らの人生観を竹沢先生に託して語る長編小説『竹沢先生と云ふ人』を連載しました。

敗戦後は、戦時中の自分の愚かさや他者のありかた、日本文化へのきびしい反省を率直につづった『一夢想家の告白』や、自己の精神史ともいえる『わが心の遍歴』を雑誌に3年間も連載し、1961年に亡くなる晩年の最大作品を完成しました。読売文学賞を受賞したこの著書は、自伝小説の傑作といわれています。

なお、インターネット図書館「青空文庫」では、長与の代表作のひとつ『青銅の基督』を読むことができます。


「8月6日にあった主なできごと」

1660年 ベラスケス死去…スペイン絵画の黄金時代を築いた17世紀を代表する巨匠ベラスケスが亡くなりました。

1881年 フレミング誕生…青かびからとりだした物質が大きな殺菌力をもつことを偶然に発見し、ペニシリンと命名して世界の医学者を驚かせたフレミングが生まれました。

1945年 広島に原爆投下される…アメリカ空軍B29爆撃機が、人類史上はじめて原子爆弾を広島に投下しました。爆心地から半径500m以内の人々はほとんどが即死、2km以内の建物は全壊、爆発とそののちの火災で、市内95000戸の9割が灰となりました。市民およそ31万人のうち、罹災者は17万人をこえ、死者および行方不明者92000人以上、重軽傷者123000人以上と、日本占領軍アメリカ総司令部は翌年発表しましたが、じっさいの死者は1945末までに14万人をこえていたといわれます。

投稿日:2012年08月06日(月) 05:47

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)