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『にんじん』 のルナール

今日2月22日は、『にんじん』『博物誌』『ルナールの日記』などを著わしたフランスの小説家・詩人・劇作家のルナールが、1864年に生まれた日です。

フランス中部シトリー村の村長の家に生まれたジュール・ルナールは、パリの高校を卒業後に、会社員や家庭教師をしながら、詩や小説を書きはじめました。1889年に文芸雑誌の創刊に力をそそぐうちチャンスをつかみ、この雑誌にたくさんの詩や物語、評論を載せ、知名度を高めました。

1892年『根なしかずら』、1894年に『ぶどう畑のぶどう作り』を発表すると定評を得るようになり、同年に出版した『にんじん』は、小説としてだけでなく、のちに戯曲化されて、大成功をおさめます。『博物誌』(1896年) は、田園の自然や農村生活をしっかり観察し、詩情とユーモアあふれる短文集の傑作といわれています。1897年には散文劇『別れもたのし』を上演させて大成功を収め、いちやくルナールは一流作家の仲間入りを果たしました。やがて政治にも興味を持つようになり、故郷で父とおなじ村長になって村の政治を真剣につとめ、1910年に亡くなりました。23歳のころから亡くなるまで、日々ルナールがつけていた日記は『ルナールの日記』として死後に出版され、当時の文壇の様子や、ルナールの人間性がよくあらわれた日記文学の傑作といわれています。

代表作『にんじん』は、赤い髪とそばかすのある顔のために「にんじん」とよばれている少年が、母親や家族の冷たいあつかいに苦しむ物語です。49の短い章からなり、特別なあらすじがあるわけではありません。母親は「にんじん」をたえずしかり、他人にも悪口をいいふらします。兄や姉も弟に冷酷で、父だけは、冷淡ではあっても少年の味方ですが、出かけていることが多く周囲は敵だらけ。でも「にんじん」はそんな境遇をふんがいしたり恨んだりすることなく、冷静に生きるように心がけます。少しばかりひねくれているところはあるものの、子どもらしい無邪気さにあふれ、ユーモアや機智を忘れません。こうして「にんじん」は、ウソやおせっかいの多いおとな社会をじっとみつめながら成長していきます。そしてある日、「にんじん」は母への反抗を決意します…。

この作品は、ルナールの少年時代の自伝といわれていますが、感傷におちいることなく、客観的に心理描写を綴ったことが成功の要因だと思われます。なお戯曲では、父と「にんじん」が、愛情を通じ合う場面で物語を締めくくっています。


「2月22日にあった主なできごと」

622年 聖徳太子死去…推古天皇(叔母)の摂政として、「17条の憲法」「冠位十二階」の制定など、内外の政治を立派に整えた飛鳥時代の政治家 聖徳太子 が亡くなりました。

1732年 ワシントン誕生…イギリスからの独立戦争で総司令官として活躍し、アメリカ合衆国初代大統領となった ワシントン が生まれました。

1848年 フランス2月革命…フランスの首都パリで、選挙改革を求める集会が禁止されたことに抗議した労働者や学生がデモ行進やストライキを行ったことで、国王が退位して、第2共和制がスタートしました。革命はヨーロッパ各地に伝わり、ナポレオンの失脚後の「ウィーン体制」(1789年のフランス革命以前の状態を復活させる) の崩壊につながりました。

1989年 吉野ヶ里遺跡…佐賀県にある「吉野ヶ里」の発掘調査の結果が発表され、国内最大規模の弥生時代の環濠(かんごう)集落と大々的に報道されました。

投稿日:2012年02月22日(水) 05:26

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)