今日2月10日は、江戸時代末期に「天保の改革」を指導したことで知られる水野忠邦（みずの ただくに）が、1851年に亡くなった日です。
1794年、唐津藩主・水野忠光の次男として生まれた忠邦は、17歳で藩主になりました。忠邦はかねがね、幕府の政治に不満を持ち、自分が老中になって政治をやりなおすならば、力の弱まった幕府の息をふきかえすことができると考えていました。しかし、唐津藩主は、貿易港で海外に向けた日本の窓口である長崎を守る大役があり、当時は外国船の動きが活発になっていたため、両方をやるわけにはいきません。そこで忠邦は、唐津藩から遠州（静岡県）浜松藩に国替えすることを将軍にねがい出ようと考え、重臣たちに話しました。しかし、家老の代表が、国替えに反対すると、ほかの家来たちもいっせいに同調しました。
「私は藩主だ。藩主の命令がいやなら、荷物をまとめて去れ」──忠邦の決然とした態度に、家来たちはおしだまり、1817年に浜松藩にうつることになりました。そして、寺社奉行、大坂城代、京都所司代などをつとめた後、1839年に老中になった忠邦は、徳川家斉が亡くなって家慶が12代将軍になると、念願の大改革にとりかかりました。
この当時は、家康が幕府をひらいてから200年あまりもたち、商業の発達にひきかえ、武士階級の力は次第におとろえていました。長い太平の時代がつづいて、武士たちは剣術よりも、歌や踊りなど芸ごとに夢中になり、幕府も大名たちも、商人から借金をかかえて苦しんでいるようなありさまでした。そこへ追いうちをかけるように「天保の大飢饉」がおこり、各地で一揆が荒れくるって、世の中はたいへん乱れていました。
幕府の危機がせまっていることを感じ取った忠邦は、自分と意見のあわない役人や、役に立たないと思われる役人を次々とやめさせたのを手はじめに、乱れた風俗を取り締まるなどの改革を開始しました。農村から江戸にでてきている農民に、村にかえって農業にはげむように命じた「人返し令」、商品の独占取引をやめさせて物価の安定をはかった「株仲間解散令」、江戸10里四方、大坂5里四方を幕府の直轄地として幕府の経済力をたかめる「上知令」、「倹約令」を出して大名から農民にいたるまでこれを守らせ、剣術をすすめ、芸事を禁ずるなど、改革を次々とおしすすめました。
しかし、あまりの厳しい取り締まりのため、幕府や大名たちのなかでも忠邦に反対する人たちが多くなり、改革を開始してからわずか2年4か月で、忠邦は老中の地位を追われてしまいました。
その後忠邦は、出羽国（山形県）に国替えさせられ、56歳でさびしく世を去りました。
「2月10日にあった主なできごと」
1657年 新井白石誕生…江戸時代中期に活躍した旗本・政治家であり、歴史、文学、言語学、政治、地理、兵法、考古学、民俗学などに通じる博学の学者だった 新井白石 が生まれました。
1763年 イギリスがカナダを獲得…イギリスとフランスとの間で争われた植民地7年戦争が終わり、パリ条約が結ばれて、フランスはカナダをはじめ、ミシシッピー川以東のルイジアナをイギリスに譲渡し、北アメリカの領土を失いました。英国はすでにインドのフランス植民地も得て、いわゆる「太陽の没しない大帝国」を築き上げました。
1904年 日露戦争勃発…中国東北部の満州と朝鮮半島の支配権をめぐって紛糾した両国でしたが、日本政府はこの日、大国ロシアに対し宣戦布告をしました。
