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国際的禅学者・鈴木大拙

今日7月12日は、禅の悟りについてなどを英語で著し、日本の禅文化を海外に広めた仏教学者の鈴木大拙(すずき だいせつ)が、1966年に96歳で亡くなった日です。

1870年に旧金沢藩(石川県)の藩医の子として生まれた大拙(本名貞太郎)は、中学校を退学後に小学校の教師をしていましたが、ふたたび学問を志して21歳で上京、東京専門学校(現早稲田大学)をへて、東大哲学科に入り、同郷の西田幾多郎とともに学びました。

在学中に鎌倉円覚寺へ参禅しているうち、禅について勉強していた米外交官の娘ビアトリス・レインと、釈宗演(しゃく そうえん)に師事しました。1897年に師の推せんを受けてアメリカに渡り、哲学者で東洋学者のポール・ケーラスのもとで、中国古代の歴史や仏教に関する研究を深めます。そして、ケーラスの経営する出版社で東洋学関係の雑誌編集を手伝いながら、『大乗起信論』を英訳したり、英文による初の著作『大乗仏教概論』を刊行して、禅文化や仏教文化を海外に広く知らせました。

1908年ヨーロッパに渡り、1909年に帰国すると、円覚寺に住みこみました。学習院と東大で英語を教えながら、雑誌『禅道』を創刊、1911年42歳のとき、「東洋思想や東洋感情を欧米各国の人々へ宣布することを生活目標にする」ことで、ビアトリス・レインと結婚しました。

1921年に京都の大谷大学教授に就任すると、同大学内に東方仏教徒協会を設立、今も刊行され続けている英文雑誌『イースタン・ブディスト』を創刊しました。その後は、大学で講義をするかたわら、数々の英文と邦文による著作、アメリカコロンビア大学など海外での講演旅行をするなど、目標を着々とこなしていきました。

生涯に著わした著作はおよそ100冊で、そのうち23作が英文で書かれています。国内でも、英文の『禅と日本文化』が翻訳されて多くの読者を得るなど、今話題の評論家・梅原猛は「近代日本最大の仏教者」と、大拙を高く評価しています。

晩年は鎌倉にもどり、1941年に文化勲章を受章、その年金で東慶寺に自ら「松ヶ岡文庫」をこしらえて研究生活を行いました。1950年からアメリカに移り、アメリカのさまざまな大学で仏教思想に関する講義を行うなど、亡くなる数年前まで仏教思想を深く考え続けた人生でした。


「7月12日にあった主なできごと」

1192年 鎌倉幕府始まる…源平の戦いで平氏に勝利した 源頼朝 は、征夷大将軍に任命され、鎌倉幕府を開きました。鎌倉幕府は、武士によるはじめての政権で、1333年に執権の北条氏が新田義貞らに滅ぼされるまでおよそ150年間続きました。

1614年 角倉了以死去…豊臣秀吉、徳川家康の朱印状による安南(ベトナム)貿易で巨万の富を得、富士川、高瀬川などの河川開発を行なった 角倉了以 が亡くなりました。

1925年 放送開始…東京放送局(のちのNHK)が、ラジオの本放送を開始しました。

投稿日:2011年07月12日(火) 06:03

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)