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『善の研究』 の西田幾多郎

今日5月19日は、明治から昭和前期に活躍した日本を代表する哲学者・西田幾多郎(にしだ きたろう)が、1870年に生まれた日です。

現在の石川県かほく市に、代々つづく庄屋の家の長男として生まれた西田は、教師をめざし師範学校に入りました。しかし病気のために退学せざるをえませんでした。さらに、師弟愛にあふれていた金沢の第四高等学校に入学しましたが規則づくめの校則に変わったことに抵抗して退学、その間に両親の死にあうなど、多くの苦難を体験しました。その後は東京帝国大学哲学科選科を卒業、故郷にもどって旧制中学教師や第四高等学校の講師をつとめ、のちに山口高校から学習院大学をへて京都帝国大学の助教授、教授となって退官しました。

その哲学大系は「西田哲学」とよばれ、1911年に発表した『善の研究』にもっともよくあらわれています。「なによりも経験が根本である」と説く純粋経験・実在・善・宗教の4編に分かれ、論理主義と直観主義の統一をめざしたものでした。それまでの日本の哲学は、古代ギリシアに生まれヨーロッパで発達した西洋哲学が、明治維新後に翻訳・紹介されたために、哲学といっても西洋哲学の受け売りにすぎませんでした。そのため、『善の研究』は学界でも注目され、西洋哲学とはひと味違う独自性が評価されて、旧制高校生の必読書となりました。

『善の研究』以後も西田は、居を鎌倉に移し、次々と研究成果を発表しました。西田哲学の根底をなすのは、禅仏教の「無の境地」という考え方で、西田は若い頃に郷里に近い禅寺で座禅体験をしており、それを近代哲学、仏教思想、西洋哲学の中にとりこんだといわれています。世の中のしきたりなどにはあまりこだわらない人で、形式的なことや枠にはまったことが大嫌いでした。とても真面目な性格で、原稿をいったん引き受けたら必ず期限内に書き上げたかわり、書けないと思ったら、どんな依頼にもはっきりことわったといった人間性が伝えられています。

なお、オンライン図書館「青空文庫」では、西田哲学の中核をなす 『善の研究』など12編 を読むことができます。


「5月19日にあった主なできごと」

1560年  桶狭間の戦い…織田信長 は、尾張の国桶狭間 (おけはざま・現在の豊明市) で、わずか2千人ほどの兵力で4万5千の軍を率いる今川義元軍を打ち破って、いちやく戦国大名の中でも一目をおかれる存在になりました。

1645年 宮本武蔵死去…江戸時代初期の剣豪で、書画でも優れた作品を残した 宮本武蔵 が亡くなりました。

1725年 新井白石死去…徳川幕府6代将軍家宣(いえのぶ)に仕え、優れた文治政治を行なった儒学者の 新井白石 が亡くなりました。

投稿日:2011年05月19日(木) 05:22

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)