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近代批評の確立者・小林秀雄

3月1日は、『考へるヒント』『無常といふ事』『本居宣長』などを著し、評論を小説や詩歌のような文芸と並ぶ独立したジャンルへと高めた評論家 小林秀雄が、1983年に亡くなった日です。

1902年、東京神田に生まれた小林秀雄は、東京帝国大学仏文科に入学し、ランボオらフランス象徴派詩人から大きな影響を受けました。ほとんど大学に顔を出さなかったのに、小林のランボオ論を読んだ指導教官は、「これほど優秀なら出席する必要なし」といったというエピソードが残されているほどの学生でした。

1929年、雑誌「改造」の懸賞評論に入選するや、評論家として活躍することになります。以後、時代の流れに冷静な眼を向け、『文芸評論』で、労働者の立場からその心情を描いたプロレタリア文学を批判をするなど、雑誌「文学界」の中心になって活動、『私小説論』『ドストエフスキーの生活』ほか本格的な評論を立て続けに執筆して、戦前の昭和文学史の中で、常に中心的な位置を占めていきました。

太平洋戦争中からは、古典や古美術、哲学、芸術全般へと幅を広げ、戦後間もなく日本文化再発見のエッセイというべき『無常といふ事』を発表しています。さらに、『モオツアルト』『ゴッホの手紙』『私の人生論』『考へるヒント』など話題作を次々に著しました。雑誌「新潮」に1965年から11年間にわたって連載した『本居宣長』は、小林の批評家としての知性を結晶させた記念碑とさえいわれています。

三島由紀夫 は著書『文章読本』の中で「日本における批評の文章を樹立した」と評価するなど、「批評とは、自己を語ること」と主張する小林から、大きな影響を受けた批評家や知識人は枚挙にいとまがありません。


「3月1日にあった主なできごと」

1810年 ショパン誕生…ピアノの形式、メロディ、和声法など、これまでにない表現方法を切り開き「ピアノの詩人」といわれる作曲家 ショパン が生まれました。

1871年 郵便制度開始…これまでの飛脚制度にかわって、前島密を中心に欧米の制度にならった郵便制度をとりいれ、日本に郵便制度をスタートさせました。

1892年 芥川龍之介誕生…『蜘蛛の糸』『杜子春』などの童話や、『地獄変』『河童』『奉教人の死』など百数十篇もの名作をのこした作家 芥川龍之介 が生まれました。

1919年 3.1独立運動…1910年に日本の統治下となった朝鮮で独立運動がおきました。韓国ではこの日を「三一節」という記念日にしています。

1954年 第5福竜丸被爆…南太平洋にあるビキニ環礁で行なわれたアメリカ水爆実験で、危険水域外で漁をしていたにもかかわらず、日本のマグロ漁船第5福竜丸の乗組員23人全員が放射能を浴びる「ビキニ事件」がおきました。9月には無線長の久保山愛吉さんが亡くなったことで、原水爆禁止運動が高まりました。第5福竜丸の船体は、東京・江東区にある「夢の島公園」に展示公開されています。

投稿日:2011年03月01日(火) 06:15

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)