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『怒りのぶどう』 のスタインベック

今日12月20日は、『怒りのぶどう』『エデンの東』など多数の話題作を著したアメリカの作家スタインベックが、1968年に亡くなった日です。

1902年カリフォルニア州サリナスに生まれたジョン・スタインベックは、幼いころから故郷の自然や農場に親しみ、動物や草木の生命の尊さを肌で感じながら育ちました。やがて、ドストエフスキー『罪と罰』、ミルトン『失楽園』などを読みふける文学好きな少年に生長しました。

1920年、スタンフォード大学に入学して海洋生物学を学びましたが、翌年には授業を全休して、牧場や道路工事、砂糖工場などでさまざまな労働を経験しました。1925年には退学して帰郷し、山小屋の番人をしたり、マスの孵化場などで働くかたわら、売れない小説を書きはじめました。そんなさまざまな体験により、苦しい生活をする下層民を理解する心が培われたのでしょう。1935年、浮浪者仲間を主人公とした『トーティーヤ大地』を出版したところ、ベストセラーになって、いちやく注目されました。

スタインベックの名を決定づけたのは、1939年に発表した『怒りのぶどう』です。大恐慌のさなか、大干ばつや砂嵐、大資本の進出によってオクラハマの土地を奪われた農民が、カリフォルニアへむかう旅と苦闘の人生を描いたもので、1930年代のアメリカ資本主義社会の矛盾に怒りをぶつけた小説でした。作品は賛否両論を引き起こしましたが、アメリカ史上記録的なベストセラーとなり、「ピュリッツァー賞」「全米図書賞」などを受賞しました。 さらに『怒りのぶどう』は、ヘンリー・フォンダの主演で映画化され、2つのアカデミー賞を獲得しています。

1952年には、大作『エデンの東』を発表。旧約聖書の「創世記」に記されているカインとアベルの確執や、カインがエデンの東へ逃亡する物語をヒントに、南北戦争から第一次大戦までの時代、カリフォルニアの一家族の歴史を描いた作品で、父親からの愛を切望する息子の葛藤と反発、和解などを描きました。1955年に公開された映画は、ジェームス・ディーンの演技が話題を呼んで、大ヒットを記録しました。

スタインベックは、1962年にはノーベル文学賞を受賞しましたが、国内の評価はあまり芳しいものでなく、晩年の生活は決してめぐまれたものではありませんでした。作品には、上記以外に『二十日鼠と人間』『月は沈みぬ』などのほか、厳しい自然の中に生きる、4つの短編からなる心の優しい少年の物語『赤い子馬』があります。この作品は、スタインベックの自伝的な小説といわれています。


「12月20日にあった主なできごと」

1848年 ルイ・ナポレオン仏大統領…皇帝 ナポレオン の甥にあたるルイ・ナポレオンが、選挙に全投票の75%を得て、第2共和制大統領に就任。その後ルイは大統領の権限を強化し、4年後に第2帝政をはじめ、ナポレオン3世となりました。

1853年 北里柴三郎誕生…ドイツの コッホ に学び、ジフテリアや破傷風の血清療法の完成やペスト菌の発見など、日本細菌学の開拓者 北里柴三郎 が生まれました。

投稿日:2010年12月20日(月) 06:27

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)