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『神曲』 のダンテ

今日9月14日は、イタリアの都市国家フィレンツェに生まれた詩人で、彼岸の国の旅を描いた叙事詩『神曲』や詩集『新生』などを著し、ルネサンスの先駆者といわれるダンテが、1321年に亡くなった日です。

詩人ダンテは、ベアトリーチェという一人の女性を、心に秘めた恋人として一生愛しつづけました。

ダンテがベアトリーチェに初めて会ったのは、9歳のときです。祭りの日にまねかれた家で、美しい少女ベアトリーチェをみたとき、天使のように気高くて、この世の人とは思えないほどの清らかさに心をうたれました。少女はダンテと同じ年ごろでした。それから9年めの春、フィレンツェを流れる川のほとりで、二人は偶然に出会いました。ベアトリーチェは、なつかしそうににっこりして、気品に満ちたあいさつをしました。ダンテはすっかり心を奪われてしまいます。その喜びにペンをはしらせ、詩にうたいあげました。

このときの詩は、のちに『新生』という詩集にまとめられました。『新生』は、ベアトリーチェにささげたソネット(14行で書かれた詩)の名編です。

川辺で会ったとき、すでに人妻であったベアトリーチェが、病魔におそわれ、24歳の若さで死んでしまいました。出会いの喜びではじまる『新生』も、深い悲しみで終わっています。

ベアトリーチェは、またダンテの代表作『神曲』にも、聖女として登場します。『神曲』は「地獄編」「煉獄編」「天国編」の3編にわかれ、100章1423行にもおよぶ長編叙事詩です。ダンテみずからが主人公となり、さまざまな苦しみにあったすえ、聖女ベアトリーチェに天国へみちびかれ、人間の幸福を知るという話です。ダンテは、これらの詩集のほかに『饗宴』という哲学書や『帝政論』という論文なども書きのこしました。

ダンテ・アリギエーリは、1265年に中部イタリアの都フィレンツェの貴族の家に生まれました。ラテン語学校をへて、有名なボローニャ大学にすすみ、文学、芸術、科学などを学びました。とくに古代ローマの詩人ベルギリウスの詩にひかれ、自分も詩作をはじめました。ソネットをたくさん書いたのもこのころです。

やがて、ダンテは役人になり、その後、市の代表委員の一人に選ばれて政治の世界にはいりました。そのころのヨーロッパは、都市を中心にした小さな国がいくつもあり国の内外に勢力をあらそっていました。政治家になった翌年、ダンテは反対勢力の人たちに陥れられてしまい、留守のあいだの欠席裁判で、永久追放の宣告をうけました。

フィレンツェを追われたダンテは、その後20年近くも、イタリアの各地をさまよい歩きました。有名な『神曲』は苦しい放浪生活のなかから生まれた傑作です。

なお、オンライン図書館「青空文庫」では、ダンテの『神曲』 を翻訳で読むことができます。


「9月14日にあった主なできごと」

1822年 ロゼッタストーン解読…1799年 ナポレオン がエジプト遠征の際に持ち帰ったロゼッタストーンを、フランスのシャンポリオンが解読に成功。古代エジプト文明の存在を解明するきっかけになりました。

1849年 パブロフ誕生…消化腺と条件反射の研究でノーベル賞を受賞したロシアの科学者 パブロフ が生まれました。

投稿日:2010年09月14日(火) 08:00

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)