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「方丈記」 の鴨長明

今日3月30日は、鎌倉時代の僧侶 鴨長明(かもの ちょうめい)が随筆『方丈記』を、1212年に完成させた日です。人生や社会のはかなさや移ろいやすさを綴った格調ある文章は高く評価され、清少納言 の「枕草子」、兼好法師 の「徒然草」とならび、日本古典文学の3大随筆に数えられています。

『方丈記』の冒頭の部分は特に有名で、声に出して読みたい、暗誦したい文の代表格の一つといってよいでしょう。

「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまりたる例(ためし)なし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。玉しきの都の中にむねをならべいらかをあらそへる、高きいやしき人のすまひは、世々を経て盡きせぬものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔ありし家はまれなり〜」

(川の水は絶えることなく流れていくようにみえるが、よくみると元の水ではない。淀みにうかぷ水のアワも、消えたり結んだりで同じではない。世の中に住む人も住まいも、同じようなものだ。立派な都に高貴な者たちが競いあって家を建てるのは、いつの時代も変わらないことだが、気をつけて見てみると、昔からある家はまれにしかない〜)

鴨長明は、京都・下賀茂神社の神事を統率する家の次男として1155年に生まれました。

源俊恵の門下として和歌を学び、勅撰歌人となって活躍しました。(『千載和歌集』に1首『新古今和歌集』に10首収録されています) ところが、父親のあとをついで神官として道を望みましたが同族の反対にあって実現できず、50歳の頃、失意のうちに出家しました。日野山に方丈(4畳半ほどの広さ)の庵を建て、閑居して綴った随筆を「方丈記」と名づけたのはそのためです。

長明は、歌論書『無名抄』、仏教説話集『発心集』、家集『鴨長明集』を遺し1226年に死去しました。

なお、移り行くもののはかなさを綴った書き出しから、同時代の災厄についての記述、自らの庵での生活を語る『方丈記』の全文は、オンライン図書館 「青空文庫」 で読むことができます。


「3月30日にあった主なできごと」

1746年 ゴヤ誕生…ベラスケスと並びスペイン最大の画家のひとりである ゴヤ が誕生しました。

1853年 ゴッホ誕生…明るく力強い『ひまわり』など、わずか10年の間に850点以上の油絵の佳作を描いた後期印象派の代表的画家 ゴッホ が生まれました。

1867年 アメリカがアラスカを購入…デンマーク生まれでロシア帝国の探検家であるベーリングは、ユーラシア大陸とアメリカ大陸が陸続きではないことを18世紀半ばに確認して以来、ロシアは毛皮の貿易に力をそそぎ、1821年に領有を宣言していました。その後財政難に陥ったロシアは、この日アメリカに720万ドルで売り渡す条約に調印しました。1959年、アラスカはアメリカ合衆国の49番目の州になっています。

1987年 ゴッホ『ひまわり』落札…在命中には、わずか1枚しか売れなかったゴッホの作品でしたが、この日に行なわれたロンドンのオークションでゴッホの『ひまわり』(7点あるうちの1点)が史上最高価格53億円で落札されました。落札したのは安田火災海上保険(いまの損保ジャパン) で、現在は「東郷青児美術館」で公開されています。

投稿日:2010年03月30日(火) 09:54

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)