今日3月29日は、江戸本郷の八百屋太郎兵衛の娘お七が、1683年鈴ヶ森刑場で火あぶりの刑に処せられた日です。
お七は、1681年の暮れにあった火事で焼け出され、一家は円乗寺というお寺に身をよせることになりました。この寺に吉三というお七と同い年の小僧がいて、朝夕に顔をあわせるうちに、お七は吉三に恋心をいだくようになりました。吉三もお七を憎からず思っていることがわかって、二人はいつしか離れがたい間柄になっていきました。
やがてお七一家は再建され、家に戻りますが、お七は吉三のことが忘れられません。「何とか吉三に会えることができないだろうか」という思いがつのって、火事が起きて焼け出されたら、また一家は円乗寺へ避難して、吉三にあえるだろう──理性を失ったお七は、吉三に会いたいというと思いだけが募って、隣家との間に古綿にワラを包んで火をつけました。
「火事だ!」。近所の人が四方にひろがる煙に気がついて叫びました。たくさんの人がすぐにかけつけて、水をかけたために大事にいたりませんでした。ろうばいして、立ちすくんでいたお七は、町役人に取り押さえられ、小伝馬町の牢屋につながれました。
放火の罪は、火あぶりの刑にきまっていました。当日は、牢屋の裏門から馬に乗せられ、市中引きまわしの末に鈴が森の刑場に送られました。亡きがらは、3日3晩、そのままさらしておかれたと伝えられています。
お七の処刑から3年後の1686年、井原西鶴 がこの事件を『好色五人女』(巻四)に取りあげてから有名になりました。
「3月29日にあった主なできごと」
1912年 スコット死去…イギリスの南極探検隊の隊長として南極点に達するも、ノルウェーの アムンゼン 率いる探検隊に先をこされ、帰途スコットは、猛吹雪にあって遭難死しました。
1925年 普通選挙法成立…従来までは一定の税金を納めた者しか選挙権がなかったのに対し、25歳以上の男子に選挙権を与えるという「普通選挙法案」が議会を通りました。