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民主主義を叫んだ吉野作造

今日1月29日は、大正期を中心に活躍した政治学者・思想家で、大正デモクラシーの立役者といわれる吉野作造が、1878年に生まれた日です。

作造は、「民本主義」の思想家として知られています。民本主義は「デモクラシー」の訳語なので、「民主主義」と訳すべきなのですが、当時は、大日本帝国憲法のもとにあって、主権は天皇にありました。そのため、主権が「民」にあるという言葉をさけて「民本」という言葉を用いたといわれています。

作造は、いまの宮城県古川市の綿屋の長男に生まれました。仙台から仕入れてきた原綿を打ちほどいて売り出す商家でしたが、父親が教育熱心だったため、幼い頃から学問に打ちこんだために成績は中学・高校とトップクラスで、東京帝国大学政治学科に入学しました。

大学卒業後、欧米留学にでかけ、ドイツ、オーストリア、フランス・イギリス・アメリカで3年間政治学を学んだのち、母校の講師をつとめながら、新聞や雑誌にさまざまな政治論を発表しました。

その論文の多くは、キリスト教の立場から民主主義のありかたをといたもので、いかにして国民がよき政治主体となるかというより、いかによい執政者を選択し、監督するかという点にありました。そのためには多くの人たちに選挙権を与え、普通選挙を行なうことなどを強く訴えたものでした。当時、選挙権を持っているのは、税金を一定以上を払っている地主や金持ちたちに限られていたため、正しい政治を望むことなど夢物語という状況だったからです。

日本は天皇の治める国で、民主主義など危険な思想だと考える人たちは、作造の考えに反対して演説会にも妨害を加えたり、暗殺を企てる者さえあらわれました。でも、作造はひるむことなく論戦に挑み、大山郁夫や長谷川如是閑ら同時代の大正デモクラシーの理論的指導者や、東大の教え子たちの応援をうけながら、民主主義を広める努力を続けました。

やがて、1925年に普通選挙法が議会を通り、婦人を除く25歳以上の男子全員に選挙権があたえられることになったのです。大日本帝国憲法という天皇主権の時代に、デモクラシーが世界の大勢であることを、広く一般の人たちに向けて論じた作造の功績は、大いに評価されるべきでしょう。


「1月29日にあった主なできごと」

1866年 ロマン・ロラン誕生…『ジャン・クリストフ』『ピエールとリュース』『ベートーベン研究』などを著したフランスの理想主義的作家、思想家 ロマン・ロラン が生まれました。

1872年 初の人口調査…近代的人口調査を実施してきた明治新政府は、この日総人口3310万9826人と発表。この年から江戸時代の人別帳にかわる戸籍が作成されました。

1957年 南極に昭和基地…南極観測隊はオングル島に到達し「昭和基地」を開設しました。34名の隊員のうち、西堀隊長以下11名が初の越冬観測のためここに残りました。

投稿日:2010年01月29日(金) 09:14

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)