7月6日は、フランスの細菌学者、化学者のパスツールが、1885年に狂犬病ワクチンを初めて人体に接種した日です。パスツールは、ドイツの コッホ と並び、近代細菌学の開祖といわれています。
ルイ・パスツールはフランスのいなか町に、1822年皮なめし職人の息子として生まれました。地元の小学校、中学校に通いましたが、成績はあまりよくありませんでした。ただひとつだけ、先生をいつも感心させたことがありました。
それは、本を読んでいるときだけは、たとえ、なかまがそばでけんかを始めても気がつかないほど、真剣だったようで、このことが偉大なパスツールを生む大きな力になったのかもしれません。
やがてパリへでて、大学の付属中学校へかよい始めましたが、わずか3週間で家族のいる町へ帰ってきてしまうほど、気弱なところがあったようです。しかし、再び近くの中学校でがむしゃらに勉強をしなおすと、21歳のときにふたたびパリへでて、すばらしい成績で教育大学へ入学しました。このころから、パスツールの成績はぐんぐんよくなり、卒業してからも大学の化学研究室に残って、実験や研究をつづけるようになりました。
パスツールの研究には、酒石酸の性質の解明、低温殺菌法という手法でワインや牛乳、ビールなどの腐敗を食いとめたり、養蚕業の救済に取り組むなど、その功績は、数かぎりなくあります。
その中でも、最大の功績は、狂犬病を予防注射で防いだことでしょう。狂犬病はとても恐ろしい病気で、この病原菌を持った犬にかまれると、助からないほどでした。それを弱い病原菌(ワクチン)を人や動物に注射して、軽い病気にかからせて抵抗力をつけるという「予防接種」の方法を開発したのがパスツールでした。
この日、狂犬に13か所もかまれた子どもをだきかかえた母親が、パスツールのもとに飛びこんできました。このままでは、死ぬばかりと考えたパスツールは、狂犬病ワクチンを毎日1回ずつ注射して、14日間続けました。その結果、子どもは狂犬病の発病をまぬがれ、助かったのでした……。
なお、パスツールの詳しい生涯は、いずみ書房のホームページで公開しているオンラインブック「せかい伝記図書館」11巻「パスツール」をご覧ください。