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古事記をまとめた学者・太安万侶

今日7月7日は、稗田阿礼(ひえだの あれ)が暗誦した古代の伝承を記録し 「古事記」 としてまとめあげた奈良時代前期の学者 太安万侶(おおの やすまろ)が、723年に亡くなった日です。

日本で最も古い歴史書のひとつに 『古事記』 とよばれるものがあります。奈良時代にまとめられたものです。上・中・下の3巻に分かれ、上巻では、日本に天皇が現われるいぜんの神代のことがしるされています。中・下巻では、第1代の神武天皇から、第33代の推古天皇までの、天皇の歴史や国づくりの物語がつづられています。

「天皇を中心にした国家を建設していくためには、天皇の流れを明らかにして、日本は天皇の国であるということを、はっきりさせておかなければいけない」

『古事記』 は、このような目的で、朝廷の力で作られました。歴史の本ではあっても、香り高い文学の味わいをもっています。太安万侶は、この 『古事記』 をまとめた、奈良時代初めの学者です。若いころから朝廷につかえ、正五位から、のちには民部卿という高い官位についていました。

『古事記』 は、太安万侶がまとめたとはいっても、安万侶ひとりの力でできあがったのではありません。それよりも、およそ30年まえに、天武天皇は、朝廷につかえていた稗田阿礼という役人に、天皇のことを伝える古い資料を読ませて、それをもとに歴史の本を作ろうとしました。ところが、天皇は願いを果たさないうちに亡くなり、そのご、このしごとは、つぎの持統天皇のときも文武天皇のときも、そのままになっていました。

安万侶は、女帝の元明天皇の時代に、天皇の命令でこのしごとをひきつぎ、阿礼の読みおぼえたことを整理して、712年に、3冊の歴史の本にまとめ、朝廷に献上したのです。

『古事記』 は、そのころの政治の目的で、歴史がゆがめられたところや、かざられたところが少なくありません。しかし、古代の日本のすがたを知るには、かけがえのない本です。

安万侶は、年をとってからは、全部で30巻の 『日本書紀』 を著わすしごとにも加わり723年に世を去りました。2つの歴史書の完成に力をつくしたことをのぞくと、安万侶の生涯についてのくわしいことは、何もわかりません。安万侶の死ご1200年以上すぎた1979年に、奈良市で、安万侶の墓誌が発見されて、日本の歴史学者のあいだで大さわぎになりました。これほど有名な人の、これほど古い墓が見つかったのは、初めてだったからです。それまで、太安万侶はほんとうにいた人ではないのではないか、という説もありましたが、その疑いは、いちどに吹きとんでしまいました。

なおこの文は、いずみ書房「せかい伝記図書館」(オンラインブックで「伝記」を公開中) 19巻「聖徳太子・中大兄皇子」 の後半に収録されている14名の「小伝」から引用しました。近日中に、300余名の「小伝」を公開する予定です。ご期待ください。

投稿日:2008年07月07日(月) 09:18

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)