今日6月19日は、名随筆 「パンセ」 や空気の圧力についての実験により 「パスカルの原理」 などを発見したことで有名なフランスの数学者、物理学者、哲学者パスカルが、1623年に生まれた日です。
パスカルは、科学者として、数かずの業績をのこすとともに、キリスト教の信仰をとおして人間を深くみつめました。
ブレーズ・パスカルは、フランス南部のクレルモン市に生まれました。幼いころ母を失い、父の手で育てられました。父は税務裁判所の所長をつとめた人で、自然科学にもくわしい教養のある人でした。パスカルが8歳のときに、子どもの教育を考えて、父は役所をやめ、一家でパリに移り住みました。
パスカル少年の知能は、なみはずれていました。父が何かを教えようとすると、いつでももっとずっと難しいことを学んでいました。だれからも教わらない幾何学を、パスカルは一人で勉強していたということも伝えられています。たとえば、ユークリッド幾何学の定理を自分の力で発見し、証明してしまいました。「三角形の内角の和は2直角である」 という古代ギリシアの大数学者ユークリッドの解明した定理です。パスカルはこの時まだ12歳でしたから、父はたいへんおどろきました。
その後も数学や物理学の研究をつづけ、わずか17歳で 「パスカルの定理」 という幾何学上の大きな発見をしました。また、計算の仕事に頭を痛めている父親を助けようと、19歳で計算器を発明し、25歳になると 「パスカルの原理」 という物理学の法則を発見するなど、めざましい活やくぶりでした。
パスカルは、若くして偉大な業績をあげました。しかし、自分が幸福だとは少しも思いませんでした。社会に認められ、出世をすればするほど不安がつのります。文学や哲学に救いを求めますが、解答は得られず、心の悩みは増していくばかりでした。そこで、人間の正しい姿を宗教に探そうとしました。熱心な努力をつづけました。するとある夜、パスカルの心に、キリストのために生きようという、不思議な気持ちがわきおこりました。どんなことがあっても、ゆるがない強い気持ちでした。
ロアイヤル修道院に入り、パスカルは、静かな信仰生活を送りました。人間に対して、するどい考えをもつようになり、奥深い思想をはぐくみました。パスカルの 『パンセ』 は、キリスト教信仰の道しるべとして書かれたものですが、洗練されたことばで、人間性を語ったたいへん高度な内容の書物です。
「人間は自然のうちでもっとも弱い、1本の葦にすぎない。しかし、それは、考える葦である」
有名な1節です。人間は悲惨なほどに弱い存在だけれども、同時に、人間は考えることができるから偉大であるといっています。
なおこの文は、いずみ書房「せかい伝記図書館」(オンラインブックで「伝記」を公開中) 6巻「ニュートン・フランクリン」 の後半に収録されている14名の「小伝」から引用しました。近日中に、300余名の「小伝」を公開する予定です。ご期待ください。