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ヒューマニズム作家・ディケンズ

今日6月9日は、「オリバー・ツイスト」 「クリスマスキャロル」 「二都物語」 などを著し、イギリス人には朝のベーコンと卵のように、欠かすこと出来ない作家とさえいわれるディケンズが、1870年に亡くなった日です。

18世紀から19世紀にかけて、イギリスを中心に産業革命がおこりました。これまでの手工業から、水力や動力を用いて大量に物を生産する工業制機械工業がとり入れられたことによって、社会構造も大変革がおこりました。機械の発達は、労働者の中から大量の失業者を生み出しました。彼らは機械をのろい、石を投げつけ、社会には悲劇がたくさんおこりました。ディケンズはそんなめぐまれない人々に涙をそそぎ、人間らしさを失わずに生きつづけることの大切さを、ユーモアをまじえながら、さまざまな作品に描きました。イギリスばかりでなく、今も世界中の人々に読まれ続けているのは、そんな作者の深い人間性にあるといってよいでしょう。

チャールズ・ディケンズは、1812年にイギリスの港町ポーツマス近くで生まれました。父親は海軍の下級書記でしたが、お人よしで不運な人でした。ディケンズは9歳の時、父の転勤により、ロンドンに移り住みましたが、身体が弱くひっこみじあんで、小さな牧師の学校に通いながらも、静かに読書をするのが好きな子どもだったようです。12歳の時、借金がもとで父親は刑務所に入れられました。そのため、ディケンズは靴ずみ工場で、レッテルはりの仕事をしなくてはなりませんでした。やがて、法律事務所に勤めながら、速記の勉強をし、19歳で新聞記者になりました。

21歳のとき、ボズという名である雑誌に載せていたエッセーが、挿絵といっしょに人気が出て、3年後に 「ボズのスケッチ」 というタイトルで出版されると、たちまち人気作家になりました。以来、「オリバー・ツイスト」(みなし子オリバーを中心にあわれな浮浪児たちを描いた作品)、「骨董店」(少女ネルと骨董店主とのさすらいの旅)、「デイビット・カッパーフィールド」(自伝的小説)、「二都物語」(フランス革命を題材に、パリとロンドンを舞台として、親たちがかたき同士となった恋人たちを主人公にした歴史小説) など、次々と発表していきました。とくに 「クリスマスブック」 は有名です。1843年に発表した「クリスマスキャロル」(金持ちでよくばりの老人が、友人のゆうれいの忠告で生まれ変わる名作) にはじまり、毎年のように心暖まる作品を発表し続けました。いまも、このシリーズは、欧米のクリスマスシーズンには欠かせない読み物として定着しています。

ディケンズは、小説や劇、エッセーを刊行するほか、4つの雑誌編集にもかかわり、著書と同様にすばらしい売れ行きをみせました。さらに、外国に自作の朗読旅行にでかけたりもしました。こうして、人間わざとは思えないほどのむりがたたって、1870年、58歳で亡くなりました。

なお、いずみ書房のホームページにあるオンラインブック 「レディバード100点セット」 には、ディケンズの3作品、55巻「二都物語」、 61巻「クリスマスキャロル」、 67巻「オリバー・ツイスト」 の日本語参考訳を収録しています。ぜひ目を通すことをお勧めします。

投稿日:2008年06月09日(月) 12:03

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)