今日5月14日は、「種痘記念日」 といわれています。1796年イギリスの外科医ジェンナーが、初めて牛痘にかかった人の膿を少年に接種 (種痘) し、天然痘という伝染病を根絶させるキッカケとなったためです。
日本では古くから 「はやりやまい」 といって恐れられていたのは、たいてい天然痘のことでした。これが流行しだすと大事件で、7、8割の人がこれにかかり、何万人、何十万人という人々が死んでいきました。外国でも同じで、天然痘が流行しだすと、手の打ちようがありません。この病気になると、膿をもった水ぼうそうのようなものができ、たとえ命をとりとめても、あとが残ったり、顔がでこぼこになったりするのです。
ジェンナーは、イギリスのバークレイという田舎の牧師の子として1749年に生まれ、幼い頃から鳥や植物に興味を持つ子どもでした。やがて、15歳で医学を志し、24歳で故郷で開業しました。ある時、牛からうつる牛痘にかかった人は、天然痘にかかることがないという言い伝えを耳にしました。いろいろ調べているうち、軽い天然痘にかかった人は、ひどい天然痘がはやっても心配ないことがわかってきました。中国の古い本には、天然痘にかかった人のかさぶたを、幼児の身体にくっつけたり、鼻の穴にふきこんだりするとよいと書いてありました。日本には、天然痘の出た家でダンゴを作り、となり近所にくばるといういい伝えがあることも耳にしました。
「長い年月、天然痘に苦しめられてきた人類が、その体験から、軽い天然痘をはやらせる方法を見つけたに違いない」 と考えるようになったジェンナーは、20年ものあいだ、どうすればたくさんの人たちに、安全な方法で軽い天然痘にかける方法を研究し続けました。そして、[牛痘の膿を人間に植えつけるという種痘が決め手になる]と確信するようになりました。
ジェンナーは、自分の考えの正しさを証明するために、近所の人たちに、子どもを実験に使わせてくれるように頼みました。でも、親たちは承知してくれるはずはありません。そんなある日、一人の少年がジェンナーを訪ねてきます……。
いずみ書房のホームページ・オンラインブックでは 「せかい伝記図書館」 を公開中です。約100人の伝記のうちのひとりとして 「ジェンナー」 の生涯を詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。なおWHOは、1980年に 「天然痘の根絶宣言」 を行いました。天然痘は人類が根絶した唯一の伝染病(感染症)です。