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『クマのプーさん』 のミルン

今日1月31日は、世界じゅうの子どもたちや大人に大人気の『クマのプーさん』シリーズを著したイギリスの児童文学者・詩人のミルンが、1956年に亡くなった日です。

1882年にロンドンで生まれたアラン・アレクサンダー・ミルンは、子どもの頃に『透明人間』などの作品で「SFの父」といわれたウェルズの教えを受けて、啓蒙されたいわれています。ケンブリッジ大学を卒業後は、1906年から8年間にわたりユーモア誌『パンチ』の編集助手になりました。その後、軍隊に入りますが、第1次世界大戦後にふたたび『パンチ』誌に復帰しながら、作家として軽妙なエッセイや戯曲、推理小説『赤い館の秘密』などを著しました。

しかし、ミルンを有名にしたのは、40歳を過ぎてから著した『クマのプーさん』シリーズです。たまたまミルンに男の子ができ、子どもの心の世界を身近にみつめるチャンスができたことで、自身の幼いころの体験を思いだしながら、作家として技術を駆使してえがいた作品群で、シリーズは、童話集『くまのプーさん』『プー横丁にたった家』、童謡集『クリストファー・ロビンのうた』『クマのプーさんとぼく』の4点です。

「500エーカーの森」に暮らす、くまのプーさんと、友だちのクリストファー・ロビン(長男の名)、コブタ、ろばのイーヨー、はねっかえりとらのトラー、カンガルーのカンガやルー、ふくろうのフクロ、ウサギやモモンガらがくりひろげるお話の数々は、空想と現実がたくみに混じりあいながら、明るくユーモラスに展開し、子どもたちを魅きつけて離しません。

主人公のプーさんは、ハチミツが大好物な食いしん坊のぬいぐるみ(テディベア)。自称「すこし頭のよわいくま」で、失敗ばかりしています。そこから、とぼけたユーモアや、ゆかいな機知が生まれてきます。そして、どの動物たちも生き生きとした個性にあふれていて、童話というより「魔法のオモチャ箱」「詩情あふれるファンタジー」といった印象です。

たとえば、「ハチミツの木」という、こんなお話があります。
ある日、プーはかしの木のてっぺんに、ミツバチの巣を見つけます。「ハチミツが取れる」と思ったプーは、長いこと考えて、青い風船にぶらさがって飛び上がり、ミツバチに黒い雲だとだまして、ミツをとろというのです。ところが、ミツバチは疑り深そうに、プーの頭のまわりをぶんぶん飛びます。「ロビン! こうもり傘を持ってますか。それをさして、ちぇっ、雨らしいぞっていいながら歩いてください。そうすれば、ミツバチはほんとの雲だと思うでしょうから」ロビンは、おかしなプーだと笑いながらも、いう通りにしました。プーはなんとかハチミツを手にしましたが、どうして下へおりてよいかわかりません。あわてているプーを見て、ロビンは、おもちゃの銃で風船を撃って穴をあけたため、プーはやっと下りることができました。危険な体験をした日でしたが、ハチミツをいっぱい食べられて、プーにはよい一日でした…。

シリーズの挿絵は、アーネスト・シェパードによってペンとインクで描かれた名品ぞろいで、これらは子どもたちよりも、大人に人気があります。また、シリーズを原作としたディズニー社のアニメーション作品も存在し、こちらは『くまのプーさん』となっています。


「1月31日にあった主なできごと」

1797年 シューベルト誕生…『ぼだい樹』『野ばら』『アベ・マリア』など600曲以上もの歌曲や、『未完成交響曲』などの交響曲や室内楽曲、ピアノ曲などを作曲した シューベルト が生まれました。

1947年 ゼネスト中止命令…激しいインフレを背景に生活を脅かされた労働者たちは、共産党の呼びかけで2月1日にゼネスト決行を計画しましたが、マッカーサーGHQ総司令官は、ゼネストは日本経済を破滅においやると、中止を指令しました。

1958年 アメリカ初の人工衛星…前年にソ連に先を越されたアメリカは、初の人工衛星エクスプローラ1号の打ち上げに成功しました。

投稿日:2011年01月31日(月) 06:55

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)