今日2月27日は、消化腺と条件反射の研究でノーベル賞を受賞したロシアの科学者パブロフが、1936年に亡くなった日です。
「犬は、えさを見ると、よだれをだす。ところが、えさをあたえるたびにベルを鳴らすのをくり返すと、やがて犬は、ベルの音を聞いただけで、よだれを流すようになる」
これは条件反射という、動物の脳のはたらきを示す実験です。
1849年、ロシアのリャザンという古い町で生まれたイワン・パブロフは、この条件反射を発見した、ソ連の生理学者です。
神父を父にもったパブロフは、父のあとをつぐために、少年時代は神学校で学びました。しかし、しだいに生理学がすきになり、20歳のときにはペテルブルク大学へ進んで、消化器や神経の研究にとりくむようになりました。
「食べものと胃と神経の関係はどうなっているのだろうか」
大学を卒業して医学博士の学位をとったパブロフは、犬を使って実験を始めました。それまでは、動物実験というと、かいぼうや大がかりな手術がつきものでした。でもパブロフは、犬を苦しませないで実験する方法をくふうしました。正しい観察をするためには、犬を、できるだけ自然のすがたのままにして調べることがたいせつだ、と信じていたからです。
まず、腹部の小さなあなから胃液が流れでるようにした実験で、食べものを消化する胃液のでかたは、あたえられた食べものによってちがうことや、脳や神経のはたらきと結びついていることを、明らかにしました。また、口の中のだ液が、ほおから外に流れでるようにした実験では、だ液も脳のはたらきとつながりがあることを、つきとめました。
こうして、およそ30年もの長い年月と、気の遠くなるような数かずの実験から、条件反射は発見されたのです。
「いったい、条件反射はどうしておこるのだろうか」
さらに実験をつづけたパブロフは、ついに条件反射が大脳のはたらきでおこることを発見して、それまでわからなかった大脳のしくみも、はっきりつきとめました。
犬の実験で発見された条件反射が、そのまま人間にもあてはめることができました。パブロフが生涯をかけて、人間のからだと心の関係をみきわめようとした努力が、大きくみのったのです。
1904年、パブロフはロシアの科学者としては初めて、ノーベル医学賞を受賞しました。「わたしが発見したのは、ひとかたまりの土くれです」と語っていたということです。年をとってからも「観察、そして観察」という大すきな言葉を実行して、86歳で亡くなるまで、研究をおこたりませんでした。
以上は、いずみ書房「せかい伝記図書館」(オンラインブックで「伝記」を公開中)13巻「ノーベル・マークトウェーン・コッホ」の後半に収録されている7編の「小伝」の一つ 「パブロフ」 をもとにつづりました。約100名の伝記に引き続き、先週より、300余名の「小伝」を公開しています。
「2月27日にあった主なできごと」
1876年 江華条約の締結…鎖国をつづける朝鮮に国交を求めていた明治政府は、前年に日本の軍艦が朝鮮の江華島付近で砲撃を受けたのに対し、猛反撃を加えました(江華島事件)。この日更なる圧力をかけて江華条約を締結させ、念願の朝鮮開国を実現させました。この条約は釜山・江華港を貿易港として開港、朝鮮海航行の自由、江華島事件の謝罪など、日本優位の不平等条約で、日本の朝鮮侵略の第1歩となりました。
1933年 ドイツ国会議事堂炎上…この日の夜突然、首都ベルリンの国会議事堂が燃え上がり、ヒトラー はこれを共産党員のしわざだとして、共産党員をすべて逮捕し、間近にせまった選挙に出られなくさせました。このため、ナチス党は選挙を有利に進め、独裁のあしがかりとしました。