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「万葉調歌人」 田安宗武

今日6月4日は、徳川御三卿田安家の初代当主となり、荷田在満や賀茂真淵に師事し、やがて共に研鑚しあった国学者の田安宗武(たやす むねたけ)が、1771年に亡くなった日です。

1715年、第8代将軍徳川吉宗の紀州藩主時代に次男として生まれた田安宗武は、幼少の頃から聡明な子として知られ、9代将軍となった兄の家重より、宗武を推す声があがるほどでした。しかし、第3代将軍家光以来の長幼の序が重視されて家重が後継者となり、1729年、宗武は御三卿田安家の初代当主となりました。

宗武は、国学者として知られていた荷田在満(かだのあずままろ)を召し抱えて学び、やがて在満の推せんにより賀茂真淵を家臣にして古典研究を深め、3人はお互いに研鑚しあうほどになります。歌学では、在満が新古今調の歌風を重んじて『国家八論』を著すと、宗武はこれに反論して真淵とともに万葉主義を強調するといったように、3人の議論をまとめた『歌体約言』を著すなど、のちの国学者たちに大きな影響を与えました。

没後にまとめられた歌集に『天降言(あもりごと)』があり、宗武の青年期から晩年までの短歌307首をおさめたもので、次のような万葉調による自在な歌境を拓いたとして高く評価されています。

洲崎べに 漕ぎ出いでゝ見れば 安房の山の 雲居なしつゝ はるけく見ゆも

春雨は 音靜けしも 妹が家に い行きかたらひ この日暮らさむ

眞帆ひきて よせ来る船に 月照れり 楽しくぞあらむ その船びとは

また、古典の注解や評論を加えた『伊勢物語註』『古事記詳説』『小倉百書童蒙訓』などを著し、服飾、音楽、植物などの研究も行いました。

こうして、国学、和歌、有職故実研究などで知られた宗武は、15人の子女に恵まれましたが、長男から4男までの男子はすべて若いうちに亡くなったため、5男の治察(はるさと)が嫡子となりました。また、「寛政の改革」で知られる松平定信は、宗武の7男です。

なお、石川啄木とともに生活派歌人といわれ、国語学者としても活躍した土岐善麿は宗武の研究者として知られ、1947年に著書『田安宗武』(全4巻)で、学士院賞を受賞しています。


「6月4日にあった主なできごと」

822年 最澄死去…平安時代の初期に、天台宗をひらいた僧の最澄が亡くなりました。

1928年 張作霖死去…軍閥政治家で、中国東北部奉天派の首領だった張作霖が、日本の関東軍によって爆殺されました。

1989年 六四天安門事件…言論の自由化を推進し「開明的指導者」として国民の支持を集めた胡耀邦の死がきっかけとなって、中国・北京市にある天安門広場に民主化を求めて集結していた学生を中心とした一般市民のデモ隊に対して、「中国人民解放軍」は戦車、装甲車を出動させ無差別発砲を行なって武力弾圧。中国共産党の発表は、死者は319人としていますが、数百人から数万人の多数におよんだといわれます。
投稿日:2015年06月04日(木) 05:53

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)