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「21世紀を見ぬいた男」 トクビル

4月16日は、『アメリカの民主政治』などを著し、現代大衆社会の重要な予言者といわれるフランスの政治・思想家トクビルが、1859年に亡くなった日です。

1805年、ノルマンディー地方ベルヌーイの大地主という由緒ある貴族の子として生まれたアレクシ・トクビルは、1823年にパリ大学で法律を学び、卒業後の1827年、ベルサイユ裁判所の陪審判事の職につきました。

1831年、同僚の陪審判事ボーモンと共に、アメリカの刑務所制度の視察のために渡米すると、9か月にわたって各地を旅しながら調査と視察を行い、共著で『合衆国における監獄制度とそのフランスへ応用について』を刊行、1833年にアカデミー・フランセーズ賞を受賞しました。

さらにトクビルは、裁判所を辞職後の1835年、ジャクソン大統領時代のアメリカでの見聞をまとめた『アメリカの民主政治』を出版し、大きな反響を呼びおこしました。その著書の中で、アメリカの民主主義は、社会的諸条件を平等化し、社会活動を活発化させることで生活向上への推進力となることを認めるいっぽう、社会構成員の大多数が物質主義と個人主義に陥り、彼らが一度中央権力に依存すると、新しい型の権力の専制化や絶対化が生ずる危険性をも指摘しました。

高い評判を得たことで、1840年には『アメリカの民主政治』第2巻目を刊行。アメリカ文学が語法においてヨーロッパから独立し、上流階級より一般庶民を扱うようになるだろうとか、宗教にも寛容でさまざまな宗派が成長するとか、婦人を解放し親子の関係を変容させるなど、多岐にわたる総合的な分析を行ったことで、1850年までに13版を重ね、アカデミー・フランセーズ会員に推されています。

いっぽう、1839年からは国会議員になり、1848年二月革命の際には革命政府の議員となり、翌年にはバロー内閣の外務大臣として対外問題の解決に尽力しました。しかし1851年、ルイ・ナポレオン(後のナポレオン3世)のクーデターに巻きこまれて逮捕され、釈放後は公職を退き、歴史研究に没頭しました。1856年に著した『旧体制と大革命』は、フランスの民主政治と旧制度の崩壊の過程を分析した歴史的な著作で、『アメリカの民主政治』の続編をなすものでしたが、肺結核を悪化させ、54年の生涯を終えてしまいました。

トクビルの思想は、20世紀に入り、「大衆社会時代の予言者」「21世紀を見ぬいた人物」として再認識されるようになりました。


「4月16日にあった主なできごと」

1397年 金閣寺完成…室町幕府3代将軍の足利義満は、金閣寺の上棟式を行ないました。巨額の資金を投入した3層建で、下から寝殿づくり、武家づくり、仏殿づくりとなっています。1950年に放火による火事で全焼してしまい、1955年に再建されました。1994年、古都京都の文化財として世界遺産に登録されています。

1828年 ゴヤ死去…ベラスケスと並びスペイン最大の画家のひとりであるゴヤが亡くなりました。

1889年 チャップリン誕生…『黄金狂時代』『街の灯』『モダンタイムス』『独裁者』『ライムライト』など山高帽にチョビひげ、ダボダボずぼん、ドタ靴、ステッキといういでたちで、下積みの人たちの悲しみや社会悪を批判する自作自演の映画をたくさん制作したチャップリンが生まれました。

1972年 川端康成死去…『伊豆の踊り子』 『雪国』 など、生きることの悲しさや日本の美しさを香り高い文章で書きつづり、日本人初のノーベル文学賞を贈られた作家 川端康成が亡くなりました。
投稿日:2015年04月16日(木) 05:42

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)