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「女権拡張運動の先駆」 清水紫琴

今日7月31日は、明治時代中期に小説『こわれ指輪』『移民学園』などを著した女流作家で、随筆家・編集者としても活躍した清水紫琴(しみず しきん)が、1933年に亡くなった日です。

1868年、今の岡山県備前市に漢学者で官吏だった清水貞幹の子として生まれた清水紫琴(本名・豊子)は、3歳のとき父の仕事にともない京都に移住し、1881年京都府立第一高等女学校を卒業しました。1885年に父のすすめに逆らえず、民権家の代言人(弁護士)と結婚するものの、夫に隠し妻がいたことがわかるなど3年で破局しました。この結婚の失敗が、人間の自由や女性の権利について深く考える契機となり、景山英子と親しく交わりながら、女権の地位向上のために協力しあいました。

1890年、自立のために上京、巌本善治主宰の「女学雑誌」の記者となり、翌1891年に、結婚における契約を焦点化した処女小説『こわれ指輪』を同誌に発表して森鴎外らに絶賛されました。やがて同誌編集責任者となって、清水豊子、生野ふみ子などのペンネームを使用して、探訪記などを執筆するいっぽう、女子が政治問題などの演説を聞くことを法律で禁止されていた問題を「何故に女子は政談集会に参聴することを許されざるか」という論文にまとめて発表するなど、女権拡張運動に奔走します。

そのころ大井憲太郎と恋愛し、ひそかに男児をもうけるものの表ざたにするわけにいかず、子どもを兄の養子にしてもらうなど、自ら犯した罪の意識にしばしば体調をくずしたりしました。そんな紫琴を精神的に支えたのが、のちに東大総長となる化学者の古在由直でした。

1892年に、紫琴は古在と再婚し、女性作家として活躍しながら4男1女をもうけ、1899年に発表した『移民学園』は、未開放部落問題を扱った意欲作として注目されましたが、1901年『夏子の物思ひ』を最後に筆を絶ちました。

なお、オンライン図書館「青空文庫」では、清水紫琴の代表作『こわれ指輪』『移民学園』など、13編を読むことができます。


「7月31日にあった主なできごと」

1875年 柳田国男誕生…『遠野物語』を著すなど日本民俗学の開拓者といわれる柳田国男が生まれました。

1905年 日露戦争終結…5月末に「日本海海戦」に勝利し、ロシアに講和を受け入れるようアメリカに仲裁を申し入れていた日本に、この日樺太占領に成功したことでロシア軍が降伏、「日露戦争」が終結しました。

1944年 サン・テグジュペリ死去…『星の王子さま』をはじめ、『夜間飛行』『人間の土地』などを著した作家で飛行家のサン・テグジュペリが亡くなりました。
投稿日:2015年07月31日(金) 05:58

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)