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『日本語の起源』 と大野晋

今日7月14日は、古代日本語の音韻・表記・語彙・文法・日本語の起源、日本人の思考様式など幅広い業績を残し、大ベストセラー『日本語練習帳』を著した国語学者の大野晋(おおの すすむ)が、2008年に亡くなった日です。

1919年、今の東京深川の商家に生まれ育った大野晋は、開成中学のころから日本語に関心をいだきはじめ、1939年に東京帝国大学に入学すると、日本語学の権威橋本進吉に師事しました。1943年に同大国文学科を卒業後も、橋本に学びながら国語学、特に日本語系統論、上代語、文法論、仮名遣いの研究にたずさわりました。

敗戦後は、清泉女学院高校や学習院大学の講師をつとめながら、1947年には『上代語の清濁音の研究』を著して、『日本書紀』の万葉仮名に清濁の区別があることを指摘するなどの業績をあげ、1952年学習院大学文学部助教授(1960年に教授)に就任します。1953年には、上代仮名遣いを綿密に分析しながら、各時代における日本語の音韻数の変遷および語彙の変化を考証した『上代仮名遣の研究』を発表しました。

そして、1957年に『日本語の起源』を著し、日本語が、古代インドのタミル語にあるという説をとなえ、大きな反響をもたらします。この学説は、1981年の『日本語とタミル語』に引きつがれ、タミル語の単語が日本語に多いというだけでなく、文法構造や係り結び、五七韻律など、共通する部分が多くあること。日本語とタミル語との共通する単語には稲作に関するものが多いことなどから、稲作の伝播とタミル語の影響には密接な関わりがあったとの大野の推論は、学界内外で激しい論議を引き起こしました。さらに、大野は、2000年に『日本語の形成』を著し、この説をタミル語と縄文語のクレオール現象として説明、同祖説の総仕上げを行いました。

大野は、それらの研究と並行して『岩波古語辞典』を1974年に編纂したほか、1968〜75年には『本居宣長全集』の編纂、1985年には『類語国語辞典』(共著)を上梓しています。また、1999年には『日本語練習帳』が190万部を超える大ベストセラーとなり、「日本語ブーム」のきっかけをつくったことはよく知られています。上記以外のおもな著書に、『日本語の年齢』『日本語をさかのぼる』『係り結びの研究』(読売文学賞)『光る源氏の物語』(丸谷才一と共著・芸術選奨文部大臣賞)などがあります。


「7月14日にあった主なできごと」

1789年 フランス革命…パリ市民が政治犯を収容するバスティーユ牢獄を襲撃し、世界史上に特筆される「フランス革命」の火ぶたが落とされました。日本ではこの日を 「パリ祭」 と呼んでいますが、フランス国民は毎年、歌ったり踊ったり、心から喜びあう国民の祝日です。

1810年 緒方洪庵誕生…大坂に適塾を開き、福沢諭吉 や大村益次郎らを育てた蘭医・教育者として大きな功績を残した緒方洪庵が生まれました。
投稿日:2015年07月14日(火) 05:51

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)