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「眠狂四郎」 の柴田錬三郎

今日6月30日は、『イエスの裔(すえ)』で直木賞を受賞したほか、『眠狂四郎無頼控』『御家人斬九郎』『徳川太平記』など戦国・幕末を扱った作品を多く著し、「剣客ブーム」を巻き起こした大衆作家の柴田錬三郎(しばた れんざぶろう)が、1978年に亡くなった日です。

1917年、今の岡山県備前市に地主の子として生まれた柴田錬三郎(本名・齋藤)は、旧第二岡山中学を卒業後に医者をめざして上京、慶応義塾大学医学部へ入学するものの、半年後に文学部へ移り、在学中に『十円紙幣』を「三田文学」に発表したり、魯迅に傾倒して1940年同大学支那文学科を卒業しました。

内国貯金銀行、月刊誌『書道』編集部に勤務後、日本出版協会に勤めていた1942年、太平洋戦争に召集され、1945年には衛生兵として南方へ派遣される途中、輸送船が敵襲にあって沈没、7時間漂流する中で奇跡的に救助されました。

敗戦後の1949年から文筆活動に入ると、1951年「三田文学」に発表した『デス・マスク』が芥川賞と直木賞の候補に入り、翌1952年に『イエスの裔』で第26回直木賞を受賞して、本格的な作家活動に入りました。

時代小説を次々と発表しますが、1956年に創刊されたばかりの「週刊新潮」に『眠狂四郎無頼控』を連載すると、主人公の眠狂四郎が、「転び伴天連」という江戸時代に拷問や迫害によって棄教したキリシタンと日本人の混血という出自を持ち、平然と人を斬り捨てるというニヒルな剣士の姿、読み切りという斬新な手法が人気を呼び、剣豪小説の一大ブームを巻き起こしました。

以後、『剣は知っていた』『赤い影法師』『御家人斬九郎』『徳川太平記』などのユニークな時代小説のほか、1969年には『三国志英雄ここにあり』では吉川英治文学賞を受賞しています。現代小説では『チャンスは三度ある』『図々しい奴』『幽霊紳士』などの話題作を手がけたほか、直木賞の選考委員を務め、五木寛之、野坂昭如、陳舜臣、井上ひさし、藤沢周平らを選考しています。また、テレビ番組「3時のあなた」や「ほんものは誰だ?!」へ出演するなど、文化人タレントの側面を持つ人物でした。


「6月30日にあった主なできごと」

1898年 日本初の政党内閣…それまでの内閣は、長州藩や薩摩藩などの藩閥が政権を担当していましたが、自由党と進歩党がひとつになった憲政党が、大隈重信を首相に、板垣退助を内務大臣に内閣が組織されたため、大隈の「隈」と板垣の「板」をとって隈板(わいはん)内閣といわれました。しかし憲政党に分裂騒ぎがおき、組閣後4か月余りで総辞職を余儀なくされました。

1905年 相対性理論…20世紀最大の物理学者といわれるアインシュタインが、相対性理論に関する最初の論文「運動物体の電気力学について」をドイツの物理雑誌に発表しました。
投稿日:2015年06月30日(火) 05:19

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プロフィール

酒井 義夫(さかい よしお)
酒井 義夫(さかい よしお)

略歴
1942年 東京・足立区生まれ
1961年 東京都立白鴎高校卒
1966年 上智大学文学部新聞学科卒
1966年 社会思想社入社
1973年 独立、編集プロダクション設立
1974年 いずみ書房創業、取締役編集長
1988年 いずみ書房代表取締役社長
2013年 いずみ書房取締役会長
現在に至る

昭和41年、大学を卒業してから50年近くの年月が経った。卒業後すぐに 「社会思想社」という出版社へ入り、昭和48年に独立、翌49年に「いずみ書房」を興して40年目に入ったから、出版界に足を踏み入れて早くも半世紀になったことになる。何を好んで、こんなにも長くこの業界にい続けるのかと考えてみると、それだけ出版界が自分にとって魅力のある業界であることと、なにか魔力が出版界に存在するような気がしてならない。
それから、自分でいうのもなんだが、何もないところから独立、スタートして、生き馬の目をぬくといわれるほどの厳しい世界にあって、40年以上も生きつづけることができたこと、ここが一番スゴイことだと思う。
とにかくその30余年間には、山あり谷あり、やめようかと思ったことも2度や3度ではない。なんとかくぐりぬけてきただけでなく、ユニークな出版社群の一角を担っていると自負している。
このあたりのことを、折にふれて書きつづるのも意味のあることかもしれない。ブログというのは、少しずつ、気が向いた時に、好きなだけ書けばいいので、これは自分に合っているかなとも思う。できるかぎり、続けたいと考えている。「継続は力なり」という格言があるが、これはホントだと思う。すこしばかりヘタでも、続けていると注目されることもあるし、その蓄積は迫力さえ生み出す。(2013.8記)